相手の都合をかえりみずに「正義」を振りかざせばそれは暴力になる。
そんな「イイコト」はカッコワルい。

私が「イイコト」に興味を持ったのは社会人になってだいぶ経ち、インターネットで坂本教授(坂本龍一)のWEB SITEを見た時だった。
坂本教授のオフィシャルサイトはメッセージ性が強く、そのときいちばん伝えたいことがオープニングで出て来る仕組み。社会貢献活動に力を入れ始め、雑誌『ソトコト』が創刊された頃のメッセージはこう出ていた。
「正しいことがカッコワルいというのは罪である」と。

だから「正しいこと」を格好良くするのはメディアの役目だ、みたいなことが書かれていたように思う。(記憶だが)
デザイナーとして駆け出しだった私には衝撃的だった。
確かに真面目臭いことはカッコワルい、と。

それから自分なりに「イイコト」を考えてみたのだが、なぜだかどうも気が進まない。むしろ調べれば調べるほどに食傷するのだ。
ぼんやりとした嫌悪感を感じる。
それはなぜだろう。

根っからの悪人、という人はいるのだろうけど、幸い私は会ったことがない。
年間の名刺消費量を考えると社会に出てから3000人とは会ってることになるが、それでもだいたい、みんな「本当は良い人」だ。

良いことをしたい気持ちを持ちつつも、それが結果として現れてないだけで、誰だって、私だって、世の中を滅ぼして地球をめちゃくちゃにしてやろうだなんて思ってやしない。
けれど「このままじゃいけないこと」は無限にある。
そして「ひとりひとりができること」も無限にある。
それでいて「そうもいかない」理由もそれぞれある。
そこには、視野が広ければ広いほど、秘めた罪悪感もあるだろう。

「正しいこと」には絶対的なチカラがある。
だって正しいんだ。話が分かる「本当は良い人」の胸になら平等に響く。
けれど、忘れてはいけないのは、それでいて「そうもいかない」理由もそれぞれある、ということ。

正しい価値観を手に入れて、身体中に衝撃が走って、目から鱗が落ちて、誰かに伝えたくなる。
それ自体はとってもすばらしいことだけれど、相手の都合をかえりみずに「正義」を振りかざせばそれは暴力になる。知らずと、責めてしまうことになる。

だれでも出来る「イイコト」は続けられなければ意味がない。
相手を選んで垣根を高くしても仕方がない。
話が通じないからって、孤立しては本末転倒なのだ。

だから、生活の中の楽しみとして組み込めるような、ちょっとしたことから始めれば良いんだと思う。
楽しんでいれば、続けられるし、楽しいことはいちばん伝達する。
正しいことを振りかざして相手を傷つけるんじゃなく、楽しいを伝えてみんなを巻き込むんだ。

そうすれば、「イイコト」は自然と格好良くなるのかな、というのが教授のメッセージを受けて数年後の私が出した結論。

でもそんなことより、3000人も会って来て未だに「王子さま」を見つけられてない私にビックリ!
くっそー、イイコトで楽しく輝いて、イイヒトも見つけるぞ!

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コヤナギ ユウ
コヤナギ ユウ
(yours-storeダイヒョー)
イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
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