浮気直前の彼氏とオンナに遭遇!
ドラマは直感とともに幕を開ける——。
友達のキョンちゃんは彼氏が知らないオンナと
温泉旅行に出かける現場を押さえたことがある。
事件前日の夜、彼氏と電話で話しながら
キョンちゃんはなぜかピンときたのだという。
(なんか、なーんか、様子がおかしいぞ。
このひと明日、浮気するのでは・・・)
当時、二人は遠距離恋愛中で
彼氏は名古屋でひとり暮らしをしていた。
キョンちゃんは電話で何もたずねなかった代わりに、
翌朝、急きょ有給をもらって飛行機に飛び乗り
彼氏のアパートをたずねた。
ちょうどアパートの下に着いたとき、
外の階段を一組のカップルが下りてきたという。
自分の彼氏と、知らないオンナだった。
まさに出陣前、
まさに浮気直前、
まさしく、それは温泉!
なぜなら彼氏は手に湯桶を抱えていたから。
「わかりやす過ぎるやろっ!」
直感は冴えてたが、第一声のツッコミは間違えた
キョンちゃんなのだった。
けれど、キョンちゃんがすごいのはここからだ。
どう見ても修羅場しかありえない状況を前にしながら、
決して半狂乱にはならなかった。
知らないオンナの存在は一切無視して、
マヌケに湯桶を持った彼氏に一切の感情を込めずに言った。
「行きたいなら行ってかまわないです。
ただ、わたしは長距離を移動して疲れたから、
部屋でちょっとだけ休ませてほしい。
休んだらすぐ自分の家に帰るから。」
スタスタスタ・・・・・。
いま二人が下りてきた階段を上り、合鍵で部屋に入る。
キョンちゃんがソファに座ったと同時に
息を切らせた彼氏がドアを開けて入ってきて、謝った。
「ごめん、ほんとにただ出かけるだけだったけど、
誤解するよな。ほんとにごめん。別れたくない。
こういうことは二度としない。」・・・・・などなど。
最悪の状況を前にしたキョンちゃんの思考はシンプルだった。
1.頭にはくるが別れたくはない
2.ならば、くどくどいえば逆効果
だから謝る彼氏に、「分かった。もういいよ」とだけ言って
二人はそのまま元のさやにおさまった。
別れたくはなくても、「頭にきて」「くどくど言いたい」
そんな基本的な女心はもちろんキョンちゃんにもある。
罵倒したい衝動にかられつつ、でもこらえた。
さらにエライところとして、事件のことを以来一度も
彼氏に蒸し返さないところも加えられる。
「正しい」とか「まちがえている」とかではない。
小言の大嫌いな彼氏は、たとえ自分がわるかろうと
くどくど文句を言えば嫌がることをよく知っているのだ。
ついでに、何も言わない方が反省もするし、
文句を言わないことを評価する人だということも
キョンちゃんはちゃんと分かっている。
なんていい女なんだ!
きっと多くの男性は思うかもしれない。
わたしだって知らなければ思う。
キョンちゃんが実は彼氏より恋多きオンナだということを。
直感のオンナ、おそるべし。
でもそいうのも総じて、失いたくないイイ女、なのかもな。

- ku
- (フリーライター)
- ライター。1975年生まれ、福岡市在住。制作会社、広告代理店等に勤務後、ライターとして独立。新聞、情報誌の広告・編集記事の取材執筆を中心に活動中。「A型ですか?」とよく聞かれるので、もう「よく分かりますね〜!」とこたえるB型。好きな言葉は『私は裏切らなかった。それでいいじゃないか。』





