「大人の対応」「大人の振る舞い」大人の……


「大人」という冠が乗っかったとたんにその言葉には独特の世界観が生まれる。
「大人の」おしゃれ、「大人の」夜、「大人の」ふりかけ。
意味深度は深くなり、反比例してハードルは高くなる。
個々の意識は様々でも、自分の年齢はカンペキに「大人」に達しているし、
「大人」は想像以上にずっと身近なものになっているのだ。


私にとって「大人の恋」を思い描いた時、
真っ先に思い浮かぶ映画は本作「ビフォア・サンセット」。


若かりし頃、旅先で知り合った二人が甘酸っぱく、胸の高鳴る一夜の恋をした。
その「忘れられない恋」を胸に、再会を約束して分かれた二人の9年後の物語。
すっかり「渋メン」通り越して「枯メン」の趣きのあるジェシーが作家となってパリの書店にプロモーションで訪れる。そこにセリーヌが現れ、9年ぶりの再会を果たすのだが。


ジェシーの帰国便まで「85分」という限られた時間の中、9年の間に重ねて来た経験や、募りすぎた気持ちを抑えながら、時に的外れな会話を交わし、お互いの現況を探り合う二人。


本心を吐き出したい気持ちと、相手を気遣いまた、核心へ飛び込むことへの恐怖を感じさせるセリフ回し。その距離感がなんとも「大人」!……と、思っていたのだがセリーヌのセリフにびっくりした。


「いやな夢を見たの。夢の中で私は32才で、ぞっとして目が覚めると(9年前に恋に落ちた)23才。で、本当に目が覚めると32才の私なのよね」


なんてことだ!
「大人の恋」をしていると思っていたジェシーは私とほぼ同じ年じゃないか!
そう考えるとセリーヌの素直になれない感じも、ジェシーの保守的な選択も、身の回りで起こっている「よくある話」だ。
いつのまにか「大人の恋」はスクリーンを飛び出して、この身に起こる現実だった。


結末を見る人に委ねるこの映画、もう一度「等身大」で見てみるのはいかがだろうか。
そして、私だったらどんな選択をするだろうか。


ビフォア・サンセット

ビフォア・サンセット(DVD)
出演:イーサン・ホーク, ジュリー・デルピー
監督:リチャード・リンクレイター
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
ASIN:B001F4C652
発売日:2005/11/18
価格:1,500円(税込)

今時代を賑わせている「アラフォー」。
40代前後の主に女性を指す言葉である。
私達より一世代か二世代くらい先の話で、「失われた世代」と呼ばれる私達には「別物」と感じていた。


それにメディアを通して映る彼女たちは、底抜けに明るく楽観的に見える。
バブル時代の恩恵を受け、ある種の「成功体験」を味わった彼女達に、多少のうらやましさはあるものの、余計に「別物」感は助長される。


このごろ、寒さのせいか連日流れる「大不況」のニュースのせいか、気持ちが落込みやすい。
理想と現実のギャップに苦しみ、目標と言うと聞こえが良いが、身の丈に合わない幸せなりスキルなりを「無い物ねだり」しているだけなのだろうか、と悶々としていた。
悩むこと自体は肯定している私でも、たまには悲観的にもなる。
そこでまず、この本の帯が目に入ってきた。


「悩みながらも、タフに生きる」


そこに本のタイトルだ「満足できない女たち」


おわ、今の私だ! と思い、よくよく見てみると本のタイトルには「アラフォーは何を求めているのか」と続いていた。
「別物」と感じていた彼女たちと今の私が同じなんて……?
具体的な「アラフォー」の定義もよく分からなかったので興味本位で読んでみたのだ。


「男女雇用均等法」「バブル」「キャリア」など、本人達の意図とは別のところで、時代の扉が次々と開き、インターネットも普及していない時代で情報が足りない中選択を迫られる。当たり前なのだが、理想と現実のギャップに苦しんでいるのはなにも私達だけじゃない。


この本を読んで感じたことは「自分の近未来」だった。
「別物」なんかじゃなく、これから感じうる危機感や選択の苦悩がそこに綴られている。
アイデンティティを求めてもがくその姿に、共感以外の何を抱けるだろう。


自由が多様化し、何事も自分で選択しては、責任が付いてくる。
そんな時代の先駆者としての「アラフォー」に勇気づけられる気持ちになった。
「アラフォー」はいちばん身近な未来予想図なのだ。
彼女たちから「学べる」ということに、敬意を表したくなった。
いつまでもアグレッシブで元気なアラフォーに、敬礼!


満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか

満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか(新書)
著者:田中 亜紀子
出版社:PHP研究所
ISBN-10:4569705154
ISBN-13:978-4569705156
発売日:2008/12/16
価格:756円
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コヤナギ ユウ
コヤナギ ユウ
(yours-storeダイヒョー)
イラストレーター・デザイナー・プランナー、株式会社yours-store代表。趣味が趣味に留められず「始めることが大切」と見切り発車し、「続けることがいちばん大切」と雪だるま式に人を巻き込む。登山とカメラが今の趣味で雑誌マニア。社会科見学先でハンカチーフを集めている。
エッセイ:i REwrite you!