雨が嫌いじゃなくなったのは、20代の半ばでオートバイに乗るようになってからだ。え、オートバイで雨なんてそれこそ最悪じゃない? と思うなかれ。そりゃあ楽しみにしていたツーリング当日の朝からどしゃ降りじゃ、さすがに気分もヘコむってものだが、長距離ツーリングにでも出れば、当然雨が降る日だってある。


田舎の国道を走っていて、突然雨が降り出したらどうするか? 私はたいてい、いそいそとカッパを着込んでそのまま走り続ける。


なぜって美しいからだ。 自然に近い場所にいる時ほど、雨は美しく映る。


木々の緑は雨粒に濡れて色濃く艶めき、鼻孔には雨独特の甘い匂いが広がってゆく。雨ならではの演出効果。


そんなわけで、雨の日は自然の中をドライブするのがいい。もちろんクルマでも。今までで一番印象深い「雨ドライブ」は、(ちょっと季節外れだけど)紅葉シーズンにクルマで信州の山道を走った時だ。


濡れたアスファルトに紅葉の色がにじんで反射し、赤いじゅうたんのようになった道がずーっと先まで続いている。見上げれば、そこには本物のモミジの葉。紅葉が2倍に増えたような、紅色が匂い立つ世界。あれはカラッと晴天の日じゃ味わえない風情だ。


都会の雨だって悪くない。雨のアスファルトにネオンがにじむ〜♪なんて、数えきれないほど歌われている光景だけれど、雨には、見慣れた景色を少しだけドラマチックに変えてくれる効果があるのだろう。


というわけで、雨だってドライブ日和。 ただしスリップ事故には充分ご注意を。


Kawasaki W650

Kawasaki W650(自動二輪車)
メーカー:カワサキモータースジャパン
全長・全幅・高さ:2180×905×1140 mm
シート高:800 mm
乾燥重量:195Kg
冷却方式:空冷
排気量:675cm3
馬力:35kw
最大馬力回転数:6500rpm
始動方式:セル/キック
燃料タンク:14l
変速方式:5速

雨の日は少しドラマチック、なんて書いたけれど、まさにそれを具現化したような短編小説がこれ。


恋愛小説の名手、山田詠美の短編集『120%coool』に収められている『雨の化石』。雨宿り中に出会った人妻と年下の男の子が恋に落ちる物語だ。


叶わぬとわかっても惹かれ合う、悩める美しい人妻と純粋無垢な年下男。ストーリー自体はまさに恋愛小説の超王道。だいたい雨宿りで恋に落ちるなんて、いつのドラマじゃい!というツッコミはごもっともなのだが、この切ない恋模様に、雨の情景がじつに効果的に使われている。


「雨が降りだしたようだ。地面が濡れる匂いがする。そして、空気に線を引く音。それは、規則正しくて、僕の心臓の音に重なる。」


恋心は、雨音や雨のしずくの形にたとえられて繊細に語られる。純粋すぎるふたりの会話は、時に読むのがコッパずかしくなるほどロマンティック。それでも行間からは、しっとりと落ち着いた雨のいい匂いが立ちこめてくるようで、雨が降るとふと読み返したくなる小説なのだ。


切ない大人の恋には、濡れた雨模様がよくお似合い。あ、あとはそいつを実際に体験するだけか……。


120% coool

120% coool(文庫)
著者:山田詠美
出版社:幻冬舎
発売日:1997/06
SBN-10: 4877284745
ISBN-13: 978-4877284749
価格:480円(税込)
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タナカ マリ
タナカ マリ
(編集者&ライター)
広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。
エッセイ:思い立ったら、ラテン日和