大人の味覚なら、激辛もピリリに、苦味もほろにがになる。
人生の吸いも甘いも味わえる大人舌に憧れて。
大人になるとシブイ食べ物が好きになる。
たとえば、塩辛、佃煮、ビターチョコレート、チーズ、からし、わさびなどなど。
つまり、酒に合う甘くないつまみ系なのだが、
味もにおいも濃い癖のある食べ物が美味しく思えてくるから不思議だ。
そういえば、ビールも始めて口にしたときは、ただ苦いだけの炭酸飲料だった。よくこんなマズイものが美味しそうに飲めるものだとしかめっ面をしたものだ。でも、今では夏の暑い日には喉をならしてコーラ並みに飲み干すことができる。すごい進化だ。いや、退化か。
大人の味覚は子どもの味覚の3分の1だという。
つまり、大人になるにつれて、子どもの頃には敏感だった舌がだんだん鈍感に、とんがっていた味覚が丸くなってしまうらしい。
言われてみれば、今はこんなに大好きなわさびも食べられなかったし、「カレーの王子様」の辛さが調度よかった。子どもの頃は、辛いものを食べれば辛すぎて、苦いものは涙が出るほどただ苦いだけだった。
でも、それはいつしかうまみに代わった。
激辛はピリリに、眉間にしわをよせるほどの苦味はほろにがになったのだ。
「味のある大人」なんていう表現をすることがある。
それは言い換えれば「うまみのある人」ってことだろう。
「うまみのわかる人」でもいいかもしれない。
「違いのわかる人」でもまあいいか。
癖のきつい味を「うまみ」として楽しめるのも、大人の舌を持てたからこそ。口に入れたものをただ辛いと吐き出すだけじゃなくて、ピリリを舌の上で転がして楽しむことができるのだから。
人生の吸いも甘いも味わい尽くすには、どんな出来事も「ピリリ」と「ほろにが」にしてくれる大人の舌で味わうのが調度いいのかもしれない。
そんな味のある大人に、私もなりたいと思う。
甘くないかもしれないけれど。


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- まつざき みわこ
- (complex gala.編集長)
- 「ソフト面」の編集を担当するフリーライター。エンタメ系から小難しい系までいける理論派だが、感情が先走るクセがあり、時折フリーズする。必殺技はベリーダンスだが恥ずかしがって披露しないという、これまたアンビバレンスな彼女である。
- ・ブログ:虹色玉虫





