想定外の「不況のあおり」で人生最大の買物が視野に。
そこから見えてきたものとは?

昨年末、他人事だと思っていた不況のあおりを受けた。
突然大家さんの退職が決まり、あと半年で家を出て行かなくてはならなくなったのである。

我が家は築35年の借家で夫婦+猫1匹で暮らしている。
世の中は厳しい。
これだけペット社会だと言われていてもネコ可の賃貸物件は少ない。
テレビで言っている「ネットで簡単、お部屋探し」とはいかなかった。

このままでは住む所がなくなる。
そこで一大決心をした。「家を買う、現金で!」 諸事情があって我が家は今はローンが組めない状況である。現金だけが頼りだ。
といっても30代の夫婦が持っている金額は精々知れている。それでもかき集めれば土地値ほどの家が買えるのではないかと淡い期待をした。

年が明け不動産屋巡りを始め、買えそうな物件の前まで見に行った。しかし買いたい物件はそんなに簡単に見つからなかった。
外壁が半分剥がれ落ちた家、住人が自殺したといういわくつきの家、冬なのに草ぼうぼうで庭にガラクタが散乱している家。不動産屋から貰った紙には「居住中」とあり、このゴミ屋敷に人が住んでいるのかと驚いた。
自分が住みたくない家からは負の気が出ているようだった。
住む所が見つからない恐怖は体にも影響を与える。
ため息が増え胃が痛くなり体重も減った。
たくさんの家を見て回り、その中で1件だけ中まで見てみたいと思う家がみつかった。

休日、夫と一緒にその家の中を案内してもらった。
欠陥住宅だった。
基礎はひび割れ、床下まで水が来た形跡があり、天井裏見ても梁がなく、雨漏りの跡も柱に残っていて、床も傾いている。もはやどうして建っているのかも謎だった。
この欠陥住宅を「平成の物件でこのお値段はお得ですよ」と売っちゃうわけか?

ここでハタと気づいた。
人生で最も大きな買い物となるかもしれないのに、何故ゴミ屋敷や欠陥住宅を買わなくてはならないのか! 不動産屋には私がカモに見えているのではないか? 私は切羽詰まりすぎていて、冷静さを欠いていたのである。

賃貸物件も平行して探していた。
そしてご近所で仲良くしてもらっていた親ほど年の離れた奥さん達に、近所に借家がないかと相談した。
今はアパートやマンションでは隣に誰が住んでいるかも知らないような世の中だ。
しかし田舎は違う。
借家とはいえ、団地の忘年会やゴミ清掃などにも参加し、近所の人と野菜や果物を分け合ったりする。
ご近所付き合いは大切である。
あんなに見つからなかった借家情報はすぐ教えてもらえた。
インターネットより、不動産屋より、隣の奥さんとの口コミの方が早かったのである。
人情を感じた瞬間だった。
数ヶ月後に入居できる借家を押さえて、ようやく安心して家が探せるようになった。

不動産屋巡りで教えてもらったことがある。
不動産も縁だと。
あと数ヶ月探して買いたい家が見つからなかったら、今は家との縁がないのであろう。
終の住処を決めるにも冷静さとタイミングが必要なのだ。

profile
きたがわかすみ
きたがわかすみ
(主婦)
2004年に仕事を引退し、現在は三重で夫と猫と一緒にのんびり暮らし。
趣味はお酒と懸賞。懸賞は「温泉宿泊券」「商品券5000円」「地ビール6本セット」などなど、年間100本ほど当てる自他ともに認める懸賞マニア。