幼き日、英雄の失態にざわついた子供心。
思えばあれが大人への一歩だったのかもしれない。
小学校4年の頃、『ウ〇コ爆竹爆弾』なる遊びが流行った。
当時住宅街には電信柱が立ち並び、その根元にはだいたい“飼い主の非常識”が置いてあるものだった。
“それ”に、おもちゃ屋と駄菓子屋が合体したような店で買ってきた爆竹を詰め、点火。導火線の長さ=勇気(もしくは脚力)、そしていざ爆ぜた後には『くせー!くせぇー!!』と全力ではしゃぐ。という、そーとークオリティの高いゲームです。
そして、それの遊び仲間には1人の英雄がいた。
二枚目・運動神経抜群・尚且つ成績は悪い。
文句なしの3拍子揃った人気者、K君。
無謀とも思える彼の挑戦は、いつも僕等をドキドキさせ。またそこから無事帰還を果たす彼は、正にヒーローでした。
その日も獲物を求め公園や電信柱を転々とし、己の勇気とプライドを互いに競い合っていました。
さていざ、Kの出番。彼が挑む“それ”は、サイズ・鮮度共に申し分ありません。
さすがK!!
誰かの父から拝借してきた100円ライタでジッジッと火を点けます。
K、まだ逃げない、まだ逃げない。
そして猛烈なダッシュ。少し遅れて『パン』と炸裂音。
いつもと同じ、最後はゆとりをもって近づいて来る彼。羨望の眼差しで迎える僕等に加わった時、Kはボソッと言いました。
「……俺、今日は帰るわ……」
その言葉を残し、まだまだ遊び足りない僕等に背を向け、彼は家路に着きました。
その背中には点々と茶色い斑点が。
まだ漢字も書けないし、意味も理解していなかったけど、彼の去ったその場には、悪臭と、哀愁が漂っていました。
英雄の失態は非常にショッキングで、言葉にならない感情をたくさん教えてくれました。思えば大人への第一歩だったのかも知れない。
いざ大人になった今。あの頃に戻りたい、なんて極力思いたくはないものだが。
子供の遊びほど、真剣になれるものはないと思う。

- 菊地弘之
- (契約社員)
- 1979年、神奈川県生まれ。皮肉屋で毒舌家だが、そんな素顔をひた隠し、笑顔でサービス業道を突き進む三十路男子。その腕を買われて、老舗旅館の支配人を務めたことも。「はじめてのおつかい」の放送日には音信不通になる。噂によると、ビール片手に正座で鑑賞しているらしい。





