- L001
- タナカ マリ(編集者&ライター)
仕事を辞めて中南米へ!
オンナ30、住んだ・旅した220日
思い立ったら、ラテン日和
「心のドキドキ」に従ったら、
日本の反対側に飛んでいた。
でも大丈夫、そんなの誰にでもできるから。

何の理由も根拠もなく、なにかに強く惹かれる。
なぜ? と自分に問い正しても分からない。
ただ、心臓が底のほうからワクワク脈打つのを感じる。
そんな瞬間は、きっと誰の人生にも訪れるはず。
あぁ、これが運命の出会いってやつかしら。
……で、無鉄砲が許される学生時代ならいざ知らず、それなりに社会人経験も積み、キャリア磨きもこれから! って年齢に達した女子が、そんなワクワク感やら胸の高鳴りやらに取り憑かれると、一体どーなるのか?
私の場合、そのいたいけな(ていうか、毛が生えかけた)心臓にボッと火を焚きつけたのは、ラテン音楽とスペイン語の世界だった。ラテンといえば、そりゃあもちろんラテンアメリカ。中南米。日本ではいまいちマイナーで、「危険」「貧しい」というイメージが先立つこの大陸に、私の好きなものが詰まってる!
そう思うと、もう我慢できなかった。
……でもね、仕事があるのよ、仕事が。
そう、中南米行きを決めた頃、私はとあるWeb情報サイトの編集部で、編集&ライターとして日々慌ただしく働いていた。昔からモノを書く仕事に憧れていた私にとって、それは忙しくも充実した日々。仕事が嫌なわけじゃない。
だから、もちろん悩んだ。
もともと、モノを作る世界で企画を考え、文章を書き、皆でバタバタ忙しく動き回りながらWebサイトやら広告やらをひとつにまとめ上げる、という仕事が私はとても好きだった。しかも30歳に差しかかる頃といやぁ、まあ仕事にもいちばん脂がのってくるお年頃。
そんな時に、ラテンだ中南米だと浮かれている場合か!?
そういう、人並みの冷静な自己批判もあったわけです、わたくしにも。
思い返せば、私がラテン音楽と最初に出会ったのは大学生の頃、何の気なしに買ったキューバ音楽のCDがきっかけだった。その濃厚なリズムの世界にすっかり惚れ込み、大学を卒業する春休みには1人でキューバ旅行に出かけたりもして、まあこれがラテンアメリカに触れた原体験、とも言えるかもしれない。
とはいえ、そんなキューバの余韻に浸かるのも束の間、社会人になってからはひたすら慌ただしい日々。平日は夜遅くまで、時には休日出社もしつつ働くなか、心の片隅には「ラテン世界への憧れ」があったものの、それはあくまで趣味のレベルに収まるようになっていった。
そんな私の心の温度を一気に上げたもの。29歳にして、仕事を手放して「中南米、行こう!」と決めたきっかけが、ある日訪れたのだ。何だか、わかります?

仕事や遊びや恋愛で慌ただしく回りゆく日々、その隙間にふと入り込む想いに耳を傾けるのも、時には大切。
それは、たったひとつの言葉だった。
仕事を終えて帰宅して、家でサルサのCDを聴いていたある日。耳に届くのは、まったく意味不明のスペイン語の歌詞ばかり。ふと、曲の中で何度も耳に残る単語があった。短い言葉。でも、なぜか心惹かれる美しい響き。これ、何て意味だろう?
歌詞カードで単語の綴りを調べ、気付いたらPCの電源を入れてインターネットで翻訳ツールを検索していた。それは「noche(ノチェ)」という言葉。綴りどおりに入力して、少しドキドキしながら「翻訳」のボタンをカチリとクリック。
画面には、「夜」という一文字が現われた。
noche、ノチェ、夜。
うわーお、なんて美しい言葉だろう! その響きに心震えた瞬間をはっきりと覚えている。(字ヅラで見ても何のことやら、だけれど、音楽のメロディと一緒だとすごくロマンチックに聴こえたのよ)。
そしてこの時、「あぁ、やっぱりスペイン語をやろう、ラテン音楽を形づくるこの美しい言葉をもっと知りたい」と強く思ったのだ。私の心もカチリとスイッチが入った、というわけ。私の背中を押したのは、こんなちっぽけな出来事だったのだ。
スペイン語を勉強して、大好きなラテンアメリカの世界をこの目で見たい。
そう本格的に決意したのが2007年、29歳の夏。その後は仕事をしつつ水面下で準備を進め、2008年の2月から約半年、中米のコスタリカという国に住むことになった。このエッセイでは、そんな私自身のささやかな体験を綴っていけたらと思う。
でもね、本当に伝えたいことはひとつだけ。
本当に心惹かれたものには、素直に従ってみて。
動き出せば、絶対に何かが見えてくるからー。

毎月サイフと相談しつつ、サルサやラテンポップのCDをせっせと買い集めていた。日本のCDショップではいまいち品薄なのが悲しい〜。
【noche(ノチェ)】夜。


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- タナカ マリ
- (編集者&ライター)
- 広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。

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- L007
- ラテン的世界から見た
ニッポン人について

- L009
- コスタリカ撤退準備!
で、次なる予定は……

- L010
- いざ南米旅行に出発!
まずはメキシコへ

- L018
- [最終回]
ブエノスアイレス到着!
そして終わる、ラテン日和



















