essay

L005
タナカ マリ(編集者&ライター)

仕事を辞めて中南米へ!
オンナ30、住んだ・旅した220日

思い立ったら、ラテン日和

「自然とエコの楽園」は
どこに向かって行くんだろう?


カリブ海に面した「プエルト・ビエホ」のビーチ。本当にどこまでも青い。私的には人生至上最高ビーチ。

「コスタリカと聞いて連想するものは?」と街角アンケートをとったとしたら、「そんな国よく知らん」の回答を除いてまあ上位に来るであろうものが、「エコツーリズムで成功している国」じゃないだろうか。

そう、ここでは日本でもここ最近注目されている「エコツーリズム」を、国をあげてワッショイと盛り上げているのだ。なにせ九州と四国を合わせた程度のこの小さな国に、地球上の生物の約5%が生息しているってんだから、そりゃ自然だらけに決まってる。その恵まれた自然環境を、観光資源として生かさない手はない、ということなのだろう。

さて、そもそも「エコツーリズム」とは何ぞや? ということで手元にある『大辞泉』を引くと、「環境問題に重点を置きながら、自然と調和した観光開発を進めようという考え方」とある。ふむふむ、美しい自然で観光を盛り上げて、お金も儲かって、そのうえ自然保護につながるなんて、そんな1粒で3度おいしい話が本当なら、そりゃあ素晴らしいじゃないの、えぇ?

で、実際のところはどうなんだろう? コスタリカに行く前から、この「エコ観光」には興味があった。

というわけで、時間を見つけては何度かコスタリカ国内を旅行した。コスタリカの自然は確かに素晴らしい! 政府の「エコ観光立国」作戦のおかげか、国土の約40%が国立公園か自然保護区だというのだから、もうホントに「手つかずの自然」と身近に接することができるのだ。ジャングル・クルーズで見つけた極彩色の鳥や動物、夜の海岸で息を潜めながら間近で見たウミガメの産卵、真っ青なカリブ海のビーチ……繊細な日本の自然に慣れ親しんだニッポン人の眼に、超トロピカルな大自然の迫力はいつも濃厚な色彩とともに飛び込んできた。


「リトルアマゾン」とも呼ばれるジャングル地帯、「トルトゲーロ」のクルーズにも参加した。野生のワニ、猿、オウムやら何やらが出放題。

コスタリカには、こういったエコツアーを扱う旅行会社が星の数ほどあって、その多くは私が参加したようなジャングルツアーやリバーラフティング、動物ウォッチングなど、「自然に触れること」を主体としたツアーをずらりと揃えている。そして、これらの会社のほとんどは海外資本(主に米国)だ。さらに言えば、ビーチタウンに並ぶバーや宿のオーナーの多くも外国人で、そこで働いているのも旅の途中で「沈没中」のバックパッカーだったりする。「あのへんの店は全部外国人の持ち物だからさー」と地元の人が話すのを、よく聞いたものだった。

もちろんこれは、コスタリカに限った話じゃないと思う。そして、たぶん100%間違ったことでも、ない。美しい自然を元手にした観光業が(環境をできる限り破壊しない方法で)潤って、それに魅せられ移住する外国人もいて……なんて、素敵なことじゃない? エコ観光によって、現地の人にもたらされた仕事だって、もちろんゼロではないはずだ。

でも例えば、自然豊かな国立公園から一歩離れて、首都サンホセを歩いた時に、私がまず驚いたのは排気ガスとゴミの多さだった。どーこーが「エコ観光立国」やねん! とどつきたくなる程、ひどいのだ。ゴミには分別という概念がほぼないに等しく、バナナの皮も乾電池も空き缶も、ぜーんぶ一緒に捨てるのが当たり前。排気ガスに関しては、コスタリカに住んだ半年間で、私は肺が確実にドス黒くなった自信がある。

もちろん、排ガスやゴミ問題は突き詰めれば行政の問題で、エコツーリズム云々と同じまな板に並べて単純に語れることじゃないだろう。でもこの国ではエコや自然というものが、現地でフツーに暮らす人たちの世界とはハッキリ分かれた「よそゆきの顔」として存在しているんだな、と感じざるを得なかったのは確かだ。

コスタリカの友人が、「○○のビーチは、今は観光客向けで物価も高いから、そうそう行けないよー」と言っているのを聞いた時には、なんだか複雑だった。この国の美しい自然が、この国に暮らす人たちから遠い場所になってしまっている……。

そう言う私も、彼らからすれば外国人。そしてビーチの美しさに感動しまくって帰って来たのだ。あぁ、この永遠に悩ましい矛盾よ。

コスタリカを紹介するあるWebサイトには、こう書いてあったっけ。「中米の楽園へようこそ!」。でも、この世にパーフェクトな楽園なんて、ない。人間がそこに生きている限り。

いつも矛盾やウラオモテを抱えながら、それでも少しでも良い方向に物事が流るように、と願わずにいられない。それが、良くも悪くもリアルな楽園の姿なのかもしれないけれど。


打って変わって、ゴミ散乱中のサンホセの街。食べ終わったリンゴの芯、とかマンゴーの種、とか捨てるのはやめてくれー。

Paraíso de naturaleza
「自然の楽園」
本当に完璧な楽園だったらいいんだけどね……。

profile
タナカ マリ
タナカ マリ
(編集者&ライター)
広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。
back number
思い立ったら、ラテン日和
L001
「心のドキドキ」に従ったら、日本の反対側に飛んでいた。でも大丈夫、そんなの誰にでもできるから。
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「中南米、住んだる!」で選んだ国は、コスタリカ。
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L003
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まず何に驚いたって、ないのよ、アレが。
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L004
コスタリカには美人が多い、
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L005
「自然とエコの楽園」は
どこに向かって行くんだろう?
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中南米で生きづらい理由
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ラテン的世界から見た
ニッポン人について
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お隣りの国、ニカラグアへ!
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いざ南米旅行に出発!
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大都会メキシコシティ&
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L018
[最終回]
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