essay

L013
タナカ マリ(編集者&ライター)

仕事を辞めて中南米へ!
オンナ30、住んだ・旅した220日

思い立ったら、ラテン日和

冬真っ盛りのペルーに上陸!
首都リマでの小さな出会い


リマの街並みは、スペイン植民地時代の雰囲気を残す建物が多い。で、そこを整備の悪いおんぼろバスが黒煙を上げてすんごいスピードで走りまくる。

メキシコで10日間ほど過ごした後、お次に目指すはペルーの首都・リマ。ついについに、南米大陸に上陸だ! そして、ここから先は本当にひとりの旅になる。メキシコを一緒にまわった心強い相棒・クミちゃんとも、彼女のマンションを出て空港に向かうタクシーに乗ったところでお別れ。

本当にたったひとりで南米に行くんだ……。さすがに多少の不安が頭をよぎる。うぅぅ、どっかで殺されないかな。盗まれないかな。だいたい私の心もとないスペイン語でこの旅を乗り切れるのか……。

好奇心と勢いだけにまかせて暴走するにゃ〜ちょっとばかし知恵をつけすぎちゃった三十路バックパッカーは、こういう時に妙にリアルな「最悪のシチュエーション」を妄想しちゃうのだ。とほほ、これが『深夜特急』とは違うところよ。

とはいえ今さら怖じ気づいても仕方ないので、メキシコから飛行機に揺られて約5時間、夜も10時をまわった頃リマの空港に降り立った。前もってネットで予約していた安宿の出迎えドライバーを見つけ、タクシーで宿へと向かう。タクシーの窓から眺める夜のリマは、真っ暗で人通りはまばら、路地も荒れていてどことなく不穏な雰囲気だ。あーあ、大丈夫かなぁ。

さて一夜明けて、ひとまず街を歩くことに。リマの街は、すごくすごーく大きい。そのはずで、ここだって人口800万の巨大都市なのだ。そして車の排気ガスがハンパじゃない。コスタリカの道路もひどいもんだったけれど、リマはその比じゃない。とにかく車は多い、人も多い。街は朝から夕方まで騒音だらけだ。そして不運なことに、天気もずっと悪かった。毎日どんより曇り空、さらに南半球のペルーの9月はもう冬で寒いったらありゃしない。あぁ、メキシコの太陽と青空が恋しいよぅ……。


あまりに交通量が多いから? 運転マナーが悪いから? 大きな交差点には交通整理のおまわりさん専用ブースも。

そんなこんなで、市内にはカテドラル(教会)をはじめ見応えある歴史的建造物も多いのだが、私はどうもリマを楽しみきれなかった。こんな寒空の大都会は2日もいれば充分だ。さっさとおさらばして、地方に向かおう。そう決めた。

そんなリマだったけれど、ひとつ心に残っていることがある。昼食のためにカフェに入った時のこと、向かいの席に座っているじーさんが声をかけてきた。聞けば彼はスペイン人で、仕事の関係でリマに住んでいるという。一人旅か? どこから来た? 何日間旅してる? お決まりのやり取りの後、私は話の流れでボソッと「いつか日本語とスペイン語の翻訳を仕事にしたい」と呟いた。でもすごく勉強しなきゃ難しいんだよねぇ、と。

するとスペインじーさんは、ふんふんと私の話を聞いた後で「今の君にぴったりの言葉を贈ろう」と、ゆっくりと噛みしめるようなスペイン語で「Querer es poder(ケレール・エス・ポデール)」と言った。

ケレール・エス・ポデール。望めば叶う、とか、意志あるところに道は拓ける、とか、その手のよくある慣用句だ。でもこの時、その言葉は私の心に不思議とスーッと入ってきた。そっかぁ、自分で望めば叶うんだよな、と、その意味が心に染みわたって栄養になるような感じがした。


リマの街並みその2。後から写真で見るときれいだな。。いや実際、きれいなんですけど。

日本に帰ってきた今も、勉強や仕事やで行き詰まると「ケレール・エス・ポデール」と小さく呟く時がある。すると何となく元気が出る。そして、あのクソ寒く曇ったリマの街とスペインじーさんを思い出す。

旅の記憶って、きれいな場所を見て感動するだけじゃないんだな。

それはさておき、リマを早々に脱出した私は、お次はついにペルー観光のハイライト、マチュピチュへと近づきますっ。


黄色い建物はリマのセントロ(中心地)にそびえる大統領府。「広場・教会・政府の重要機関の建物」の3点セットが揃わなければ、中南米の街の中心地とは呼べないのだ。

Querer es poder.
「望めば叶う」
さあ皆さんも、落ち込んだ時にはボソッとどうぞ♪

profile
タナカ マリ
タナカ マリ
(編集者&ライター)
広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。
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