エイミー・マンの書く歌詞には、「こんなはずじゃなかった」というような後ろ向きな言葉があふれています。なのに、なぜかそれが愚痴っぽくなることもなく、むしろ聞く者にひたむきさ、力強さを感じさせてくれる不思議なアーティストでもあります。
例えば、アルバム「@#%&*! Smilers」収録の「31 Today」という曲の歌詞はこんな感じです。
今日は31日
何てひどい日なんだろう
昼間からギネスを飲んで
真っ暗な繭の中に身を潜めてる
男友達を呼び出して
1、2杯飲んだ
日が暮れると2人はぎこちなく触れ合って
私は感じているふりをした
私の人生はもう少し違っていたはず
私の人生はもっといいものだったはず
でもそうじゃないし この先もどうなるかわからない
こんな風に、彼女の歌にはいつも後悔の念や失意の心境が赤裸々につづられています。聞いていると思わず暗い気分になってしまいそうですよね。でもそうはならない。なぜかというと、それはたぶん、彼女の言葉がただ自分だけに向けた「ささやかな慰めの言葉」に過ぎないから。そのことが歌声や言葉選び、メロディを通して聞き手に伝わってくるからなのでしょう。
うまくいかないことばかりだけれど、でもそれが私の人生なんだ、という一種の諦観。どの曲にも通底するそうした潔さ、芯の強さが彼女の歌を輝かせ、魅力的なものにしているのです。
エイミー・マンは映画「マグノリア」のサントラでもよく知られています。彼女が書いた歌詞の一節にヒントを得たという「マグノリア」は、人生の残酷さと、そこに時おり訪れる爆発的な解放感を見事に描いた作品。彼女の世界観ともリンクしたこの名作も、ぜひ。

- Magnolia: Music from the Motion Picture(CD)
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発売日:1999/12/7
ASIN: B00003A9NN
価格: 1,929円(税込)
ジム・ジャームッシュ監督によるオムニバス映画「ナイト・オン・ザ・プラネット」。この中で僕が一番好きなエピソードが、ウィノナ・ライダー主演の「ロサンゼルス編」です。
ウィノナが演じるのはタクシーの運転手、コーキー。彼女は、たまたま乗客として乗せた映画のキャスティングを手がけるヴィクトリアに、新作映画に主演を務めてみないかと誘われます。ところがコーキーは、「自動車整備工になる」という夢のためにその誘いをあっさりと断り、そして去っていきます。
普通なら、整備工よりは女優のほうが魅力的と誰もが思うはず。でもウィノナ演じるタクシー・ドライバーは、他人から見れば疑問を感じてしまいそうなそんな選択にもまったく迷いを見せません。人に流されず、目の前の物事に安易に飛びつかない。そんな彼女はとてもかっこよくて、同時にとてもチャーミングに見えます。
ジーナ・ローランズ演じるヴィクトリアもそう感じたようで、去っていくタクシーを見送る彼女の表情には、「断るなんて信じられない」という気持ちと同時に、彼女に抗いがたい魅力を感じている様子も見て取れます。もしかすると、自分自身の若かりし頃と重ね合わせているのかもしれませんね。
20分ほどのごく短いシンプルなストーリーの中でもこんな風にいろいろな想像が広がるのは、ウィノナ・ライダーの存在感によるところも大きいでしょう。「リアリティ・バイツ」や「17歳のカルテ」などと並び、ウィノナの持つ透明感や芯の強さがうまく生かされた作品と言えます。

- ナイト・オン・ザ・プラネット(DVD)
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販売元: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
発売日:1999/12/16
ASIN: B000FQ5FRM
時間: 128 分
価格: 4,179円(税込)


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- 桜井徹二
- (映像翻訳者)
- テレビ番組、DVD、映画などの翻訳を手がける映像翻訳者。最近、高校生のころからファンだったアーティストのDVDを担当して浮かれている。また方々で作家コーマック・マッカーシーの話をするが、相手にしてくれる人があまりいない。というか、そもそも友達が少ない。





