セックスって、根本的にみっともない行為だ。いや、別に私の性欲が薄いわけではないのだが、それでも冷静に省みると、あの行為真っ只中の男女の姿ってかなりアラレもなく、不格好で、間が抜けている。


だってだって、好きな相手の前で素っ裸になって、ちょっとはみ出たお腹のお肉なんかも晒しちゃって、ヘンな体勢や表情になったり妙な声を出し合ったりしちゃうのだ。女性誌が言う「美しいセックス」なんてどこへやら、汗をかいてアクロバティックかつ妙な格好を見せ合うのが実際のセックスじゃあないか。


この本に収められているエッセイ『ベッドの創作』は、そんな「幻想と現実のセックス」の対比を鮮やかに見せてくれる。ある一組の男女がホテルの部屋で愛し合う、という同一のシチュエーションを、切なくロマンティックな恋愛小説風と、スケベさ満載のエロ小説風、2つの文体で見事に書き分けてみせるのだ。


その対比がとにかく面白くて笑っちゃう。そうそう、愛する人とのセックスだからこそロマンティックでありたいと願うのに、ハタから見たら結局うにゅうにゅ・べろべろのはしたない世界なんだよねぇ。


もちろん、男目線だけで作られたアダルトビデオだけが本当のセックスだとは思わない。でも、それって美しく素晴らしいだけでもないはずだ。女性誌が描く「きれいになるセックス」に決定的な嘘臭さが漂うのは、性行為が本来もつ「みっともなさ」が欠けているからじゃないだろうか。


愛は美しい。でも愛し合う2人の姿は、時に無防備で情けない。愛と性が抱える永遠のアンビバレント。


というわけで、私はセックスの最中に相手のマヌケな顔を見るのが好きです。愛情が深まる気がするから。え、そんなの聞いてないって?


快楽の動詞

快楽の動詞(文庫)
著者:山田詠美
出版社:文春文庫
ISBN-10:4167558033
ISBN-13:978-4167558031
発売日:1997/04
価格:440円(税込)

性への好奇心が疼き始めた頃、といえば私は高校1年のクラスの昼休みを思い出す。当時『エルティーン』という女子高生向けのエロ雑誌があり、それを誰かがこっそり持ってきたのだ。


その中に「カレが喜ぶ必殺テクニックを習得しよ♪」みたいなコーナーがあって、そこではバナナを見本に女性モデルさんがあんなことやこんなことを繰り広げる写真が、見開きページに堂々掲載されていた。ぎゃー!こんなことすんの? 生意気なくせにまだ経験がない私達は、恥ずかしがるフリをしつつ食い入るように写真を見たものだ。


……という甘酸っぱい思い出をつい連想させるのが、このメキシコ映画『天国の口、終りの楽園』。主人公は17歳のおバカ男子2名。メキシコシティの都会でいつもツルんで遊び暮らしていた悪友2人は、ある夏のパーティでスペイン人の美しい人妻に出会う。心と下半身をときめかせて彼女を口説きにかかり、最初は鼻であしらわれるものの、ひょんなことから3人で車に乗って旅をすることに……というロードムービーだ。


メキシコの強い太陽と青い空、サボテンが広がる荒野を駆けるオープンカー、と旅の道中の光景も素晴らしいのだが、映画全体に充満しているのは、「あーもう、盛りがついた男子ってほんとにアホだなー」と思わせてくれるに充分な思春期の性欲だ。


主人公2人が顔を合わせて出る話題といえば下ネタばかり。プールサイドに並べばマスターベーションを競い合う。欲求不満と好奇心が入り交じって、まあ青臭いことこの上ない。でもこの性欲に翻弄される感じ、これって程度の差こそあれ女の子にとっても懐かしいんじゃないだろうか。


さて映画の最後では、旅の果てに辿り着いた美しいビーチで、男子2人は期待どおり美貌の人妻と体の関係をもつ。そして3人で(!)激しく求め合った後に明かされる悲しい事実とは……。


この夏の経験を通して、男子2人はただお気楽でキモチいいだけではない性の一面を知る。それはつまり、能天気な少年時代の終りをも意味しているのだが。


セックスに限らず、「他人と深く関わり合う」という全ての行為には、喜びだけではなく時には危うさや哀しみもつきまとう。その甘酸っぱいだけではない味を知った時、人はひとつ大人になるのだろう。


しかしこの映画の一番の見どころは、やはり男子2人が惜しげもなく披露する性欲のおバカっぷりです、個人的には。


天国の口、終りの楽園。

天国の口、終りの楽園。(DVD)
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、マリベル・ベルドゥ
監督:アルフォンソ・クアロン
時間:106分
販売元:ナド・エンタテイメント
ASIN: B00008AOY1
発売日:2003/03/28
価格:4,935円
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タナカ マリ
タナカ マリ
(編集者&ライター)
広告やWebコンテンツ制作の世界で、企画・編集・執筆等の仕事を続けて早8年。30代に突入したわりにはあり余る体力を、趣味のバイク、ランニング、サルサダンスで燃焼中。2008年、仕事を一時中断してスペイン語を学ぶため中米コスタリカに約半年滞在。「人生やったもん勝ち」を代々の家訓として掲げることを目論む今日この頃。
エッセイ:思い立ったら、ラテン日和